【特集】大切なことは名文学が教えてくれた
人間関係や仕事のことなど、人生では何度も壁にぶつかる瞬間があります。その時どうすればいいのか、その答えを知る一つに、人間学の宝庫である名文学を読む方法があります。時間のない現代人にとって、いま読むべき名著とは何か―。人生の真理を説き続けている幸福の科学・大川隆法総裁が法話で触れられている名文学から、カテゴリー別に厳選してお届けします。
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エゴイストの死後をリアルに描写
『蜘蛛の糸』芥川龍之介
あらすじ:
お釈迦様は犍陀多(かんだた)という大泥棒が生前、一匹の蜘蛛(くも)を助けた善行(ぜんこう)に報いて地獄から救おうと思われた。そして、蜘蛛の糸を一筋垂らしたが・・・犍陀多が糸に群がる亡者に「俺のものだ、下りろ」と喚(わめ)いた瞬間、糸が切れ、彼は再び地獄に堕(お)ちていった。
著者が26歳の時に発表した、初の短編童話です。地獄に堕ちる人の特徴をリアルな霊界描写と共に表現。「他人は不幸でいいが、自分は幸せになりたい」という、自己中心的に生きる人を戒(いまし)めた作品といえます。芥川龍之介氏は霊言(霊の言葉を語り下ろす現象)で、「書いている世界と同通することがある」と語っていて、作品のリアルさは、彼が霊界と繋(つな)がって書いたところに秘密が・・・。愛の心で生きた人は天国に、欲深い心で生きた人は地獄に行きます。反省すれば地獄から上がれますが、天国の住人と同じ「善人の心境」に達することが救いの条件であることを本物語は教えてくれます。
著者紹介
芥川龍之介(1892-1927)
東京都生まれ。東大時代、短編「鼻」を夏目漱石に激賞(げきしょう)され卒業後、作家になる。一高時代からキリスト教文献に親しみ、大川総裁は彼を「『神への愛』を知り尽くした人」と評す。
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英雄は、こうして生まれた
『竜馬がゆく』[1〜8]司馬遼太郎
あらすじ:
今でこそ英雄と称(たた)えられる坂本竜馬も、昔は泣き虫な少年だった。しかし、剣術で頭角(とうかく)を現し、黒船来航を機に政治改革を決意する。そして、不可能と思えた薩長同盟、大政奉還の立役者となった。新政府樹立を目前に竜馬は暗殺され、役目を終える。
1963年、自虐史観が今よりも根強かった頃、『竜馬がゆく』(1)が発刊され、累計2千万部以上を売り上げてきました。本作について司馬遼太郎氏は霊言で、「『一人の人間に何ができるか』という公案に対して、一つの答えを与えていると思う」と語り、平凡な主人公が努力して志を貫き、大事を成す姿が描かれています。バカにされても「徳力」で人々を結びつけ、時代を変革していくさまは、人間に宿る“可能性の幅”を教えてくれます。また、藩ごとのセクショナリズムを排し、日本を一つにしようとした竜馬の大局観からは、公(おおやけ)に生きる美しさを学べるでしょう。
著者紹介
司馬遼太郎(1923-1996)
大阪府生まれ。新聞記者を経て作家となり、『梟(ふくろう)の城』で直木賞を受賞。本作や『坂の上の雲』等の歴史小説で立派な日本人を描き、敗戦後の国民に勇気と自信を与えた。
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淡々と歩む者が達人になる
『宮本武蔵』[1〜8]吉川英治
あらすじ:
剣豪(けんごう)・宮本武蔵(むさし)は誰もが恐る暴れん坊だったが、関ヶ原の戦いで敗北し、お尋ね者になる。しかし、僧の沢庵(たくあん)に捕まって反省し、3年後、剣術と精神性を磨く旅に出る。そして最後には、佐々木小次郎との決闘で勝利し、真の強さを手に入れたのだった。
吉川英治氏は、戦争の続く日本を勇気づけることを志した作家で、『宮本武蔵』はその代表作です。本作には努力論や成功論など、吉川氏が伝えたい「人生哲学」が数多く入っていて、武蔵を通して人間完成の道が描かれています。成功論について吉川氏は霊言で、「簡単に出来上がってしまわないことが大事。最大の敵は天狗(になること)」と語り、作中でも、無知ゆえに世界を知らず、慢心する人間の愚かさを沢庵に語らせています。自分の力に驕(おご)っていた武蔵が、書や人の言葉に学び、改心する姿は、読者に感動と勇気を与えてくれます。
著者紹介
吉川英治(1892-1962)
神奈川県生まれ。小学校中退後、苦境のなか作家になる。大川総裁が「常勝思考の人」と評した氏の座右の銘は、「我以外皆我師(われいがいみなわがし)」。
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経営に欠かせない「人間学」の宝庫
『三国志』[1〜8]吉川英治
あらすじ:
乱れた世を正すため、劉備(りゅうび)は義弟の関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)と27歳の頃に立ち上がった。その後、20数年の雌伏(しふく)の時を過ごし、孔明(こうめい)を得て、天下分け目の戦いに参戦。それが、「赤壁(せきへき)の戦い」である。見事、曹操(そうそう)を破った劉備は、一介のむしろ売りから一国の皇帝となった。
3000人を超える登場人物が織りなす『三国志』は、「人間学」「リーダー学」の宝庫です。吉川英治氏は『三国志』について霊言で、「(作品を通して)人情、智慧(ちえ)、頭の良さの使い分けを、いろいろなサンプル(登場人物)で勉強してほしい」と語っていて、特に、人間通である劉備からはリーダーに必要な能力が数多く学べます。彼が持つ「徳の力」は、人の上に立つ者の絶対条件です。徳とは自らの利益に関係なく、心から人を愛し、幸福にしようと行動するところに生まれます。現在、組織運営で悩んでいる人は、劉備の生き方に学んでみてはいかがでしょうか。
オススメ
「吉川英治の霊言」
『宮本武蔵』『三国志』に込めた思い、現代の英雄豪傑(えいゆうごうけつ)の見分け方など、人生哲学が満載です。全国の支部、精舎、拠点で公開中。
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人生の不幸にどう向き合うべきか
『青年の思索のために』下村湖人
あらすじ(「悲運に処する道」より):
あるとき下村湖人は、林檎(りんご)園の経営に成功した青年を訪ねた。そして、「一番つらかったことは」と聞いた。すると青年は、「仕事を始めた年初に台風に襲われたこと」と語った。だが彼は悲運の中に天意を見いだしたところ、「二度とつらいとは思わなくなった」と語った。
著者の体験談をもとに、生きるとは何か、自分とは何かなど、青年が人生について考える際に必要な指針が集められた訓話集です。「悲運に処する道」では、林檎園の若手経営者が台風被害に遭(あ)うも、「台風は毎年来るもので、それを想定せずに経営するのは甘えだ。台風でも落ちない、天意にかなった林檎を育てよう」と考えたことで成功した体験が語られています。不幸を天の戒めとして反省し、感謝、努力すること、それが苦難の中で自分を支える最大の力になると作者は語ります。考え方や心境を変えることで道は拓けることを、実例で示した作品といえるでしょう。
著者紹介
下村湖人(1884-1955)
佐賀県生まれ。17歳の頃から『新声』『明星』等に詩歌を投稿。東京帝大卒業後、教育界で活躍する。台北高校校長として名声を博した。